第120話グレイス

はっと息を呑んで目が覚めた。体は反射的に上体を起こそうとして、空を切るようにもがいた。

「おい、おい」

リースの聞き慣れた声が耳に届くのと同時に、彼の腕が私の腰に絡みついた。私を支えると同時に、安心させてくれる。

「大丈夫だ。もう大丈夫だから」

強烈なめまいに襲われ、私は彼から身を引いた。胃が激しく波打つのがわかる。

「誰か、あれを……」

だが、吐き気は待ってくれない。私は床に盛大に嘔吐してしまった。記憶にある限り、これほどの激痛を感じたことはなかった。まるで制御不能なエネルギーの奔流が、体内で脈打っているかのようだ。

「今のなしで……」

リースが声を張り上げる。私が吐き終わる...

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