第126話グレイス

リースが部屋に運び込んでくれた小さなテーブルに、私は座っていた。何を着るべきか分からず、長い間クローゼットを睨みつけていた私を見かねて、リースが親切にもレギンスと長袖のシャツを選んでくれたのだ。どうやら私がベッドで蓑虫のように引きこもっている間に、すっかり冬が到来していたらしい。あの山には、一足先に冬が訪れていた。私が大嫌いな山。プロポーズを受けた山。死にかけた山。そして、私が特別な存在でも何でもないという、以前から知っていた事実を突きつけた山。

「ジロジロ見ないでよ」

私はそう呟き、トーストの欠片をゆっくりと口へ運んだ。本当はお腹なんて空いていなかったけれど、リースは私が食事をする必要が...

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