第138章:カレブ

グレースが去っていくのを、俺はただ目で追っていた。彼女は何度もこちらを振り返ったが、決して足を止めようとはしなかった。胸の奥で、心臓が早鐘を打っている。彼女はさっき起こったことをリースには言わないと言ってくれたが、あんな重大なことを本当に隠し通せるのだろうか? 確かなことは、確信を持てるほどの時間は残されていないということだけだ……。

万が一に備えて荷物はまとめてある。だが、今回はリースも俺を簡単には行かせてくれないだろう。自分の「番(つがい)」を傷つけた俺を、兄は殺す気で追ってくるはずだ……。ソーヤーは俺の代わりにサミーの面倒を見てくれるだろうか? アラナは逃亡を手助けしてくれるだろうか?...

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