第208章:カレブ

「グレース?」俺はもう一度呼びかけた。

ここ数時間、彼女からの反応はない。いや、正直なところ、彼女がここに連れてこられてからどれくらいの時間が経ったのかも定かではなかった。彼女は俺の隣の独房に放り込まれたのだ。こんなにも近くにいるのに、触れることはできない。守ってやることもできない。

闇の中で、彼女の蒼白な顔だけが浮き上がって見えた。どうやって捕まったのか、どうして兄貴は彼女を奪われてしまったのか、俺には理解できなかった。だが、正直言ってもうそんなことはどうでもよかった。彼女はここにいる。俺たちと一緒に、この地獄の底にいるのだ。彼女に数え切れないほどの傷を負わせた場所。命からがら逃げ出し、...

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