第237話:恵み

ゆっくりと意識が浮上する。昨夜の甘美な余韻が、まだ鮮明に心に残っていた。これほど深く眠れたのは数週間ぶりのことだ。心地よいベッド、温かい毛布、そして何より重要なのは、私をその腕の中に安全に包み込んでくれているリースの存在だった。ここがアルファ・キング・パックの領土ではないことは分かっていたが、まるで「家」にいるような安らぎがあった。だからこそ、目は覚めていても、すぐに動き出すつもりなど微塵もなかった。

『おはよう、愛しい人』

初めて、リースの声が頭の中に直接響いてきた。

私は驚いて飛び起き、彼の方を振り返った。「マインドリンクができるの!?」と思わず声に出して尋ねる。

彼はニヤリと笑っ...

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