第244章:リース

宴会場は絶妙な空間だった。まさに俺が想像していた通りだ。吸血鬼にとっては、さぞかし美しい場所なのだろう。大理石の床と壁。黒いテーブルと椅子。白い食器。俺にはさっぱり意味の分からないものが描かれた旗印。これほど少ない色数でこれだけの空間を作り上げる手腕には、感心せざるを得ない。彼らは黒、白、グレーという配色のステレオタイプを、まさに忠実に守っていた。

俺はグレイスのために椅子を引いた。彼女は感謝の意を示すように頷く。ああ、神よ。ほんの一瞬でも彼女が口をきいてくれるなら、俺は何だってするだろう。だが、今はその時ではないことも分かっていた。俺はただ、彼女と喧嘩をするのが嫌だったのだ。俺は最低な野郎...

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