第246話:リース

陽動の準備に時間はほとんどかからなかった。この夜会が罠である可能性が高いことは、最初からわかっていた。夕食会への出席を強要するあの態度を見れば明らかだ。どう転んでもいいように三つの作戦を立て、限られた時間の中で考えうる限りの不測の事態を検討しておいた。俺の伴侶(メイト)がそばにいないのは心細いが、彼女がどこにいようと、これ以上彼女に注目を集めるわけにはいかない。

俺の役割は単純だった。グレースの目の前でさえ俺に媚びを売ろうとする女たちの数は少々鬱陶しいが、今回はそれを逆手に取ることにした。こういうパーティーとはそういうものだ。俺が人狼族のアルファ・キングであることなどどうでもよく、ただ名前に...

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