第253話グレイス

私はリース、アイリス、そしてマイケルの三人の間に流れる空気を、興味深く見守っていた。心のどこかでは、自分が割って入り、事態を収拾すべきではないかとも思っていたし、リースでは彼らの心に届かないのではないかという懸念もあった。だが、アイリスがリースの首に腕を回して抱きついた瞬間、私は自分の番(つがい)を過小評価していたことを悟った。彼がアルファ・キングであるのには理由があるのだ。彼は決して戯言を許さない厳格さを持つ一方で、誰よりも広い心の持ち主でもある。私が彼を弱くしてしまったと考える者もいるだろうが、私はむしろ逆だと思っている。誰かを大切に想うことは悪いことではないのだと、私は彼に思い出させてい...

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