第37章:リース

俺は信じられない思いでその子供を見つめた。

「グレースに兄弟などいない」俺は呆気にとられて言った。「双子なんて尚更だ。彼女は先代アルファの望まれぬ娘だったんだぞ。唯一の家族といえば、ルナ・キンズリーだけだ」

だが、彼を見れば見るほど、グレースによく似ていることが分かった。肌はブロンズ色で、髪は彼女より少し暗い色味だが、あの鮮烈な青い瞳と顔立ちは瓜二つだった。それに、俺は無意識のうちに何度も彼をグレースと重ね合わせていたことにも気づいた。

「ルナ・キンズリーは、腹違いの姉妹に過ぎないよ」その自称・兄は俺たちに告げた。

「よし、ちょっと待て。話を整理しよう。俺はライカンなんて聞いたことがな...

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