第53章:リース

一階の会議室へと向かう俺の足取りは、怒りで荒くなっていた。俺が新しい女に興味を持ったと知った瞬間、彼女が現れることぐらい予想しておくべきだった。むしろ、ここまで時間がかかったことの方が意外なくらいだ。これまでは、新しい女が来るたび、数日もしないうちに彼女は姿を現していたのだから。わかっていたはずなのに、グレースに夢中になるあまり、自分がアルファの王であり、王として振る舞わねばならないことをすっかり忘れてしまっていた。

「リース!」

開いたドアをくぐり抜けると、アリソンが甲高い声を上げてドアを乱暴に閉めた。彼女はデスクの上に腰掛け、椅子に足を乗せている。まるでここが自分の所有物であるかのよう...

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