第64章:恵み

私が鋭い視線を向けると、リースの顔に葛藤の色が浮かんだ。だが、私は一歩も引くつもりはなかった。私たちはもう、正式な「番(つがい)」なのだ。彼は私にマーキングをした。二人の間に、これ以上の秘密はあってはならない。そんな関係は御免だった。

彼の行動には常に彼なりの理由があることは分かっている。だが、そんなことはどうでもよかった。これは重要なことなのだ。私に関わることなら、私には知る権利がある。自分自身のことについて、これ以上蚊帳の外に置かれるのは真っ平だった。誰かが真実を知るべきだとしたら、それは間違いなく私なのだから。

「……執務室に戻って話そうか」彼は言いにくそうに提案した。

私は彼を睨...

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