第68章:恵み

キンズリーが躊躇したように見え、私も少し動揺した。もし彼女がライカンなら、その場で変化して私たち三人など瞬殺するチャンスがあったはずだ。だが、彼女の視線は絶えず私の方をチラチラと見ていた。彼女は変化できないのだ。変化すれば、自分がライカンではないことが露呈するか、あるいはライカンであることが露呈するか。どちらに転んでも彼女にとっては「詰み」だ。そして、あの視線の泳ぎ方からして、おそらく前者なのだろうと私は悟った。

「ねえ、グレース」彼女は懇願するように言った。「ただの悪ふざけだったって言ってよ。誰も傷つけるつもりなんてなかったの」

私は首を横に振り、拒絶した。頭の中がぐるぐると回る。イーサ...

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