第82章:リース

「狼毒だと?」俺は声を荒らげた。「狼毒だと!? 一体どうやって彼女の体に入り込んだんだ!」

「今はやめろ」ソーヤーは鞄の中を必死に探りながら吐き捨てた。「頼むから少し黙っててくれ。必要なものを見つけなきゃならないんだ!」

俺はグレースの手を握りしめ、呼吸を整えようと努めた。彼女は助かるはずだ。絶対に大丈夫だ。それ以外の選択肢なんてありえない。午後はずっと一緒にいたんだ。俺の目の前で、どうしてこんなことが起きたんだ? 聞きたいことは山ほどあったが、ソーヤーは静寂を必要としていた。だから俺にできることといえば、ただそこに座り、愛しいグレースに少しでも安らぎを与えようとすることだけだった。

突...

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