第86話恵み

「彼女を殺すことになったかもしれないんだぞ!」

リスの声が虚無を切り裂くように響いた。

「俺は彼女を救ったんだ!」ソーヤーが言い返す。「俺が独断で動かなかったら、彼女は死んでたんだぞ、リス! わからないのか! 彼女は死んでたんだ!」

「だが、それが上手くいくなんて確証はどこにもなかっただろう!」

「あの薬を持ってなきゃ、助けるチャンスさえなかったはずだ!」

ああ、もう。うるさいなあ。なんであんなに大声を出しているの? 私が疲れているのを彼らは知らないのだろうか。私はただ、眠りたかった。彼らが話しているのは私のこと? 死にかけたのは私、それとも他の誰か? そうだとすれば、この奇妙な感覚...

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