第87章:恵み

ライカンの大量生産だって? どうしてそんな非道なことができるの? 普通に暮らそうとしていただけの哀れな人々が、突然ライカンという闇の中に突き落とされるなんて……。彼らは自分の身に何が降りかかったのかさえ分からなかっただろうけれど、少なくともそれが良いことではないと察してはいただろう……。

「グレース」

リースが私の意識を引き戻した。私の心があまりに遠くへ彷徨い出してしまうと、彼はいつも気づいてくれるようだ。

「エイドリアンとキンズリーには悪意がある。奴らがやっていることは、ライカンであることとは無関係だ。あくまで、奴らが腐った人間だというだけの話だよ」

彼の率直な言葉に、私はわずかに微...

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