第5章

井上結衣視点

美佳と暮らし始めて二日。私にはまだ、この子のことがさっぱり分からなかった。

今まで会った中で一番不思議な子だった。時々、信じられないくらい大人びたことを言うかと思えば、普通の五歳児みたいにアニメに夢中になったりする。

でも、ソファの上で小さな足を折り畳んで丸くなり、お菓子を食べている姿を見ていると、どうしてもこの子を追い出す気にはなれなかった。私の結婚式を台無しにした子だとしても。この子の話に辻褄が合わないことばかりだとしても。

それでも、この子の責任は私にはない。慎二の娘だと名乗るなら、引き取るべきは山崎家のはずだ。

私は鍵を掴んだ。「美佳、靴を履いて。お...

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