第6章

井上結衣視点

はっと息を呑んで、私は目を覚ました。

心臓が肋骨を突き破って飛び出してしまいそうなほど激しく脈打っている。シーツは汗でぐっしょりと濡れていた。勢いよく身を起こすと、世界がぐらりと傾いた。

ただの夢。ただの夢だった。

でも、とても夢だとは思えなかった。

夢は、行ったこともない場所から始まった。

巨大なマンション。でも、その場所全体が冷たくて、空っぽな感じがした。

私は階段のいちばん上に立っていて、妊娠していた。大きく膨らんだお腹を両手で抱えると、中で赤ちゃんが動くのがわかった。

慎二が数段下で、私が下りるのを塞ぐように立っていた。でも、様子が違った...

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