第5章

佐藤悟美を見送った後、私は病室に戻り、依然として波打つ心拍モニターを見つめた。

「そんなに怒らないで」

私はそう囁きながら、林原智哉の掛け布団の角を直した。

『どうして怒らずにいられる!?』

林原智哉の心の声は、依然として怒りに満ちていた。

『あいつ、よくも俺を誹謗中傷してくれたな!それなのに、お前はなんの反応も示さず、ただあいつが俺を貶めるのを聞いてるだけだったのか?』

私は一瞬呆気に取られた。

「もう彼女には帰ってもらったわ」

『帰らせただけじゃないか!』

林原智哉の心の声は、明らかに不満を帯びていた。

『俺が小学校の時に柴犬をけしかけて人を噛ませただとか、...

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