第12章里穂さんは前に駆け引きをしていた

有岡里穂は人垣を抜け、そのまま彼女の前まで歩み寄った。首をわずかに傾げ、きれいに整った眉をきゅっと寄せる。

「ひとつ不思議なんだけど、私はあなたの仕事ぶりをちゃんと評価してるのに、どうして教室で勉強してることまで私が気にするって思ったの?」

目の前の少女はたしかに笑っていた。けれど西川安菜には、その笑みの奥にある目だけがぞっとするほど冷たく見えた。背筋がすうっと冷える。

「西川くん、みんなの前でいきなりそんな言い方をされたら、まるで私が家であなたをいじめてるみたいじゃない」有岡里穂はくすりと笑った。「もし本当にいじめてるなら、こんなにきれいな格好で学校に来られるわけないでしょ」

冗談...

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