第38章 海辺

有岡里穂が「海を見に行きたい」と思うようになったのは、やはり前世の記憶が発端だった。

兄たちが一度も叶えてくれなかった誕生日の願い。西川安菜が何気なく口にしただけで、兄たちは即座にクルーザーを貸し切って海へ出たのに――その船に、彼女だけはいなかった。そんな過去。

あの頃だって、里穂にはひとりで海へ行ける力があった。けれど、西川安菜がSNSに上げた写真を目にした瞬間、海を見たい気持ちはすっと萎んでしまったのだ。

ただ――今は、どこか違う。

阿部婆さんの存在が、里穂の胸にかすかな温度を戻してくれた。会った瞬間に彼女の疲れを嗅ぎ取れる年長者なんて、きっと本気でこちらを気にかけている。

「...

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