第40章 全部有岡さんのものだ

その問いは、有岡里穂を困らせた。前世でも今世でも、彼女が注いできた苦労も、必死に覚え込んできたことも――結局は全部、自分のものではなかったから。

そしてこれは、有岡里穂が初めて「自分は何が好きなのか」と他人に問われた瞬間でもあった。

「……ん?」

いつまでも返事がないのを見て、阿部蓮太郎が小さく鼻を鳴らす。

「ないのか」

「あります」

有岡里穂の脳裏に、前の人生で入院していたときの光景がよみがえった。病院の中庭に咲き誇る花々。荒れ果てて、心が砕けた日々の中で――あれだけが、唯一の慰めだった。

里穂はふっと笑って言う。

「花です。花って、見ているだけで……この世界にまだ希望があ...

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