第51章 殺人罪

その先は言葉にしなかったが、阿部蓮太郎が何を言いたいのか、有岡里穂には分かった。

「……ただ、その電話一本のために?」

そう問い返した。

校長が有岡哲哉に連絡を取れたこと自体は不思議でも何でもない。肉親なのだから当然だ。だが、阿部蓮太郎は違う。ただ一本の電話――学校で彼女がいじめを受けるかもしれない、そんな連絡だけでここまで駆けつけてきたのだ。

桜井瑞希が口を開く。

「阿部さん、ちょうど手が空いてたんです。それでダーレイのほうにも寄るつもりだったから、ついでに来てくださって」

阿部蓮太郎はずっと、彼女の頬の傷を見ていた。やがて低い声で問う。

「その顔の傷、どうした」

有岡里穂...

ログインして続きを読む