第49章

憂鬱な林田浅子が家に帰ると、再び平井琴美の携帯に電話をかけてみたが、やはりつながらなかった。

親友が、何も言わずに去ってしまった。

林田浅子の心は底まで沈んだ。

藤原裕也が戻ってきたとき、彼女はぼんやりと虚空を見つめていた。

「元気ないな」彼は近づいてきて、彼女の向かいに座った。

林田浅子、浅子はうなずいた。

「琴美ちゃんが海外に行っちゃったの」

許家の一家が海外へ引っ越したこと、この件については藤原裕也のほうが林田浅子よりも詳しく知っていた。

だが彼はそれを言うつもりもなかったし、その理由を林田浅子に告げる必要もなかった。

彼は一枚の書類を取り出し、林田浅子に渡した。

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