第112章 林田達也の思惑

その言葉を言い捨てるなり、林田国志は一度も振り返ることなく立ち去った。背後で幼い少女が涙を流そうが、地に膝をついて哀願しようが、彼の心に微塵の慈悲も湧かなかった。冷酷で非情なその背中は、水原寧々を底知れぬ苦痛と戸惑いの中へ置き去りにした。

その後、小林さんから彼女が藤原家に引き取られたと聞かされた。だが、後ろ盾も身寄りもない孤児を、あの藤原家がやすやすと受け入れるはずがない。それでも彼は、水原寧々の将来を案じることなど一切なかった。それどころか、当時の彼はこう思い込んでいたのだ。水原寧々は俗世の華やかさに目が眩み、虚栄心から生みの親である水原実家へ帰るのを嫌がったのだ、と。

結局、林田祐...

ログインして続きを読む