第13章 民間の苦しみを体験しているんだ

水原空の周りには黒山の人だかりができており、とても中へ入れそうにない。業を煮やした若者は、ボディガードに目配せし、アタッシュケースから札束を取り出させた。 「おい、お前ら!」若者は札束を高々と掲げ、叫んだ。「ここに金があるぞ!拾った奴のモンだ、さあ、持ってけ!」その声と共に、数多の万札が宙を舞った。

たちまち、群衆は病気のことなど忘れ、皆がしゃがみ込んでお金を拾い始め、現場は混乱に陥った。

「名医、ようやくお会いできました!さあさあ、名医にお願いしたい重要な用件があります!」

若い男性は急いで水原空を近くに停めてあるロールス・ロイス・ファントムへと案内した。

水原空は眉を上げた。なる...

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