第5章

空良視点

新崎ベイエリアのカフェ、その隅のボックス席に私は座っている。ノートパソコンの画面には、すべてを破壊しかねないファイルが光っている。周りでは人々がラテを注文し、週末の予定についておしゃべりしている。彼らは、私が何を見ているかなんて知りもしない。

指がトラックパッドの上を滑る。次から次へとドキュメントを開いていく。

銀行の送金記録。ケニアの環境当局者への三億円。メモ欄には「コンサルティング料」とある。ふざけてる。これは賄賂だ。

会議の音声。将臣の会社の副社長が、移転を拒否するマサイの家族をどう扱うかについて話している。「断れない条件を提示しろ。それでもダメなら、現地当...

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