第114章 彼女だけが知っている

神野若芽は病院を飛び出すようにして、一路、駆けた。

正門を出た瞬間、黒いフォルクスワーゲンがすっと寄せて停まる。

若芽は迷いなくドアを開け、後部座席へ滑り込んだ。

運転席の権田真鳥がちらりとバックミラー越しに若芽を見る。

いつもは冷えたように静かな彼女の顔に、今は隠しきれない焦りが浮いていた。霧のような長い眉が、きゅっと寄る。

そのとき、助手席に置かれたスマホがぶるりと震えた。

表示は――寺内七造。

真鳥は通話を取る。

「見つかった?」

若芽は前方の真鳥を凝視し、スマホの動きだけを追った。

通話を切った真鳥が振り返る。

「……手がかりが出た」

どうして真鳥が、孤児院の...

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