第205章 深くて実力を隠している

神野若芽はほっそりした指を銀白の光沢を帯びたマイクに添え、伴奏に身を預けるように朱い唇をそっと開いた。

「初めて出会った日のこと 覚えてますか……」

歌声は、山の高みから湧き出す清水のように澄み、泉が石を打つみたいにきらめき、ささやきに似た余韻で胸の奥まで染み入ってくる。肺腑を揺さぶられ、心臓の芯を掴まれる。気づけば誰もが、息をするのさえ忘れて聴き惚れていた。

当の若芽もまた、歌の中へ溶けていく。リズムに合わせて身体がゆるやかに揺れ、ふわりとした髪がまるで踊り子みたいに後を追う。

一音一音が隙なくはまり、会場は呆然と固まった。

――これが、神野若芽?

確かに声は若芽のものだ。じゃ...

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