第50章 ピアノは弾けますか?

「いやあ、よかった……神野くん、やっと来たのね。急いで準備して!」

進行担当の教師は神野若芽の姿を見つけるなり、目に見えて肩の力を抜いた。

周囲の視線も、どこか居心地が悪い。

歌ならまだしも、ピアノは別だ。生まれつきのセンスに加えて、積み重ねた訓練がものを言う世界。

――どう見ても、神野若芽に『芸術の血』があるようには見えない。

だからこそ、最初から「見物」気分の者も多かった。

今回の出し物はすでに組まれている。

観客は生徒や教職員だけではない。上の来賓も来るため、学校側も力が入っていた。

だが序盤は、正直ぱっとしない。

合唱に、漫才まがいの小ネタ。目新しさもなく、客席はだ...

ログインして続きを読む