第73章 ろうかん

切石の職人が原石を切断機にしっかり固定し、スイッチを入れた。

「お嬢ちゃんが身の程知らずにも、2,000万も出して一番見込みのないマウシットシット黒の原石を買った」

そんな噂が一気に広まり、野次馬がわらわらと集まってくる。皆、脇に立って食い入るように見守った。

大半は――神野若芽が恥をかくところを見に来た連中だ。

空気は張り詰めていた。神野若芽が手にしている石は、現時点で800万の値がついている。悪くない。だが、ここから先は一刀で車一台、一刀で家一軒。普通の人間が遊べる世界じゃない。

切断機がじりじりと石を削っていく。

神野若芽は、雲を眺めるみたいな顔でその様子を見ていた。

こ...

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