第86章 デート

「ご安心ください、神野嬢。あの方は――あなたにとって安全です」

青木啓は意味ありげに口元をゆるめるだけで、神野若芽の問いには答えなかった。代わりに手を伸ばし、彼女のために個室の扉を押し開ける。

神野若芽が一歩、室内へ踏み込んだ瞬間――背後で、青木啓が扉を閉めた。

ぱたん。

途端に、世界が沈むように暗くなる。胸の奥が「ひゅっ」と縮み、若芽は反射的に視線を走らせた。

照明は落ちたまま。

部屋を淡く照らしているのは、中央の円卓に置かれた酒紅色のキャンドル三本、その炎だけだった。

キャンドル。わざと開けられたカーテン。窓の向こうの濃い闇。

――いつの間に、こんな時間。

淡い灯りが夜...

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