第4章
学生寮に戻ったときには、もう午後四時になっていた。新しい能力のせいで、周囲のあらゆるものに異常なほど敏感になっていた私は、廊下からルームメイトたちの声が聞こえてくるのに気づいた。
「愛美、小鳥は翔真のこと、許すと思う?」沙羅の声だ。
私はすぐに姿を見せず、角で足を止めた。
「実際のところ、翔真が小鳥のこと、本気で好きじゃないのは、みんな分かってるじゃない」と愛美が言った。
『可哀想な小鳥。真実に気づいてないのは、本人だけなんて……』沙羅の心の声だった。
胸がずきりと痛んだ。つまり、私以外の誰もが知っていたのだ。
「気づいてる? 聖奈さんが現れるたびに、翔真の目には彼...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章


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