第5章

別れた次の夜、私は寮の部屋で一人、散らかった文学の課題を前に座り込んでいた。けれど、文字は目の前で踊るだけで、まったく集中できなかった。

昨日の別れの場面が、頭の中で何度も再生される。去り際の翔真の怒った顔、私のそばに毅然と立っていた悠真、そして遠巻きに見ていた学生たちのひそひそ話。

この噂がキャンパス中に広まっていることはわかっていた。

無理やり勉強に意識を向けようとしたその時、スマホが震えてメッセージの通知が来た。

『古典文学、手伝おうか?』

悠真からだった。

そのメッセージを見て、なぜか心臓が速くなった。昨日の別れ話以来、彼がメッセージをくれたのはこれで三通目...

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