第1章

栞奈視点

キッチンはトーストの匂いがした。私の手は機械的に動き続けていた。日曜の朝六時。いつも同じように始まる。私だけがキッチンにいて、他の家族はまだ眠っている。まあ、ほとんど、だけど。

「おはよ、お姉ちゃん」

恵梨香が、ぼさぼさの髪を雲みたいに顔の周りに広げながら、のろのろと入ってきた。どう見てもベッドから転がり出てきたばかりの格好で、実際その通りだった。

「おはよう」私は彼女の前に焼きたての卵が乗った皿を置いた。「オレンジジュース飲む?」

「んー」彼女はあくびをしながら、スマートフォンに手を伸ばした。

私は彼女のためにジュースを注ぎ、トーストを焼き、彼女好みにバターを塗った。最後に誰かが私のために朝食を作ってくれたのは、いつだっただろう?その考えは、いつものように心に浮かんでは、すぐに押し殺した。

恵梨香の手がグラスに当たり、牛乳がテーブルの上に飛び散った。

「あ、やだ――」彼女は飛び上がったが、お母さんがもうそこにいた。

「大丈夫よ、恵梨香」お母さんはタオルを掴み、とても柔らかく、優しい声で言った。「気にしないで。勉強で疲れてるのよね?ほら、座ってなさい。栞奈が片付けてくれるから」

もちろん、私がやる。私はペーパータオルを掴んだ。私の手は自動的に動き、こぼれた牛乳を拭き取った。その間、お母さんは恵梨香の世話を焼き、パジャマに牛乳がかかっていないか確かめ、新しいものが必要か尋ねている。

「あなたはレポートに打ち込みすぎるのよ」お母さんは恵梨香の髪を撫でながら言った。「心配だわ。あなたは生まれたときから体が弱かったんだから」

知ってる。一生そう言われ続けてきた。恵梨香がくしゃみをしただけで、家族の一大事になる。一方、私なんて床に倒れても、あの子のところへ行くために踏み越えられておしまいだろう。

「大丈夫だよ、ママ」恵梨香は、申し訳なさそうな視線を私に向けた。本当に謝る気はないけど、とりあえず謝っておく、という種類の視線。あるいは、本気でそう思っているけど、口に出すほどではない、という感じか。もう、私には分からなかった。

私はテーブルを拭き続けた。止めようとする前に、記憶がどっと押し寄せてきた。八歳の私。同じキッチン。同じ失敗。でも、私が牛乳をこぼしたとき、お父さんは私を冷たい床に一時間正座させ、許しを請うように祈らせた。「神は不注意な者を罰するのだ」と彼は言った。「学びなさい」。その後、膝は何日も痛んだ。

「栞奈?」お母さんの声が記憶を遮った。「聞いてるの?」

「ごめんなさい、何?」

「テーブルの下もちゃんと拭きなさいって言ったのよ」

「はい」私は四つん這いになり、テーブルの下に手を伸ばした。ベタベタする床の方が、私より大事ってこと。皮肉じゃない。ただの事実だ。

恵梨香は卵を食べ、お母さんは彼女がきちんと授業についていっていることを褒めた。お父さんが下りてきて恵梨香の額にキスをし、生物学の試験について尋ねた。誰も私には何も尋ねない。誰も私を見ようとすらしなかった。ちゃんと掃除しているか確認するとき以外は。

私は掃除を終え、仕事着に着替えるために二階へ向かった。鏡の中の私は疲れ果てていて、目の下には隈が張り付き、肌は病人のように青白かった。いつからこんな顔になったんだろう?

* * *

今日の喫茶みやびのランチタイムは、狂ったように忙しかった。

「注文入りました!六番テーブル!」

「はい、ただいま!」私は皿を二枚掴み、混み合ったテーブルの間を縫って進んだ。どこもかしこも家族連れ、手をつなぐカップル、ミルクシェイクを前に笑い合う高校生のグループ。みんな、とても幸せそうだ。どんな気分なんだろう、と思った。

腕が痛んだ。六時間連続で働いているのに、シフトはまだ半分も終わっていない。私は皿を置き、言われた通りにお客さんに微笑みかけ、次の注文を取りに急いで戻った。

「栞奈ちゃん!」古い馴染みの村田さんが、奥の席から私を手招きした。彼は毎週日曜、教会の帰りにやってきて、いつも同じものを注文する。ブラックコーヒーと、アップルパイを一切れ。

「こんにちは、村田さん。いつものですか?」

「その通り」彼は老眼鏡越しに私をじっと見た。「疲れた顔をしてるね、栞奈ちゃん。働きすぎじゃないかい?」

「大丈夫です」私は無理に笑った。「忙しいだけですから」

「ふぅむ」彼は納得していないようだった。「うちの孫娘が、ちょうど君くらいの歳でね。今は国立大学に通ってるんだ。医学部志望でな。君は大学に行こうとか考えたことはあるのかい?」

その質問は、必要以上に胸に突き刺さった。毎日だ。毎朝、恵梨香が授業の文句を言うのを見ているときに。毎晩、私の哀れな預金残高を数えるときに。

「ええ、その……お金を貯めてるんです」私はキッチンの方に目をやった。「自分の力で、行こうと」

「自分の力で?」彼の眉が上がった。「ご両親は?お父さんとは毎週教会で会うが。いかにも――」

「パイ、お持ちしますね」私は申し訳なさそうに微笑んで、彼の言葉を遮った。「すぐ戻ります」

キッチンで、私はカウンターに寄りかかり、荒い息をついた。

「栞奈、大丈夫?」もう一人のウェイトレスの里奈が、私の肩に触れた。

「平気。ただ――」痛みが始まった。

腹部の奥深くから、鋭い、ねじれるような感覚が襲い、握りこぶしが白くなるほど強くカウンターにつかまった。腹痛は今までにもあったけれど、これは違った。まるで、体の中の何かが内側から何かを引き裂いて出てこようとしているかのようだった。

「ちょっと――」里奈が身を乗り出した。「大丈夫そうには見えないけど」

「大丈夫」私は体を起こした。体中のすべてが、丸くなれと叫んでいるのに。「少し休めば」

でも、休んでいる時間なんてなかった。村田さんが待っている。私は村田さんのパイを掴み、キッチンのドアを押し開けた。大丈夫。何ヶ月もこうやってきたじゃない。

痛みは波のようにやってきた。無視できるほど鈍いときもあれば、叫び声を上げないように唇を噛まなければならないほど鋭いときもあった。それでも私は動き続けた。他に何ができるっていうの?

三時になる頃には、私の両手は震えていた。

「九番テーブルが――栞奈?」店長の声が、水の中から聞こえてくるようだった。

私は流し場にいた。食器洗い担当が病欠したので、皿を洗っていた。湯気が私の周りに立ち上る。熱いお湯は心地よく感じるはずなのに、胃の中に火のように広がる痛み以外、何も感じられなかった。

痛みはひどくなった。息がまともにできなくなるほどに。

視界がぼやける。手の中の皿が傾き、指の間から滑り落ちた。タイル張りの床で皿が砕け散る音が聞こえた。カウンターを掴もうとしたけれど、足から完全に力が抜けてしまった。

地面が、私を迎えにくるように迫ってきた。

「栞奈!」誰かが叫んだ。足音が、雷のようにこちらへ向かってくる。「救急車を呼んで!」

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