第3章

栞奈視点

「保険のことよ」私の声は、我ながら奇妙に響いた。「受取人、あなたなんでしょ」

「うん、そうだよ」彼女は私を見た。「だって、必要なのは私でしょ? 体も弱いし、病院にもよく行くし」

*必要なのは私。病気があるから。*その言葉が、頭の中で何度も何度も響き続けた。

「お姉ちゃん?」恵梨香が心配そうな顔で身を乗り出してきた。「大丈夫? 今、すごく顔色が悪いよ」

動かなければ、と思って立ち上がった。足が、自分の体から切り離されたような感覚だった。

「ちょっと、確かめたいことがあるの」

「何を確かめるの? お姉ちゃん、どうしたの?」

私はもう歩き出していた。

書斎のドアはいつも鍵がかかっていた。父が「神様の御用」をする神聖な場所で、私たちは邪魔をすることを許されていなかった。でも今夜は、父のルールも、プライバシーも、そんなもの何もかもどうでもよかった。

キッチンからバターナイフを掴むと、鍵穴に差し込んでこじ開けた。カチリと音がして、錠が開いた。

手の震えが止まらず、何度かやり直したが、やがてうまくいった。

まっすぐキャビネットに向かい、「財務書類」とラベルが貼られた引き出しを見つけるまで、片っ端から開けていった。

不動産登記簿謄本。それを引き抜き、視線は受取人の欄に吸い寄せられた。城之内恵梨香。

生命保険契約書。受取人:城之内恵梨香。

共同名義の銀行口座。共同名義人:城之内恵梨香。

投資信託証書。城之内恵梨香。

企業年金受給者指定書。城之内恵梨香。

すべての、ありとあらゆる書類に彼女の名前があった。ただの一度だって、私の名前はなかった。私の名前はどこにも。二十一年間、誰一人として、重要なものに私の名前を記そうなんて考えたこともなかったのだ。

結局、私は床に座り込んでいた。書類が周りに散らばる中で、胸の奥から、自分でも驚くような乾いた笑い声が漏れた。

私は二十一歳なのに、彼らにとって文字通り存在しないのと同じだ。書類上は。重要な意味では、一切。私はただの練習台、恵梨香が生まれて彼らの世界のすべてになる前に、本当に欲しいものを確かめるための下書きにすぎなかった。

すべてを元の場所に戻し、自分の部屋へ向かった。一時間ほど経った頃だろうか、寝室のドアを控えめにノックする音が聞こえた。「お姉ちゃん?」

コートを脱ぐ気力もなく、私はベッドに座ったままだった。

「お姉ちゃん、お願い。話せないかな?」ドア越しに聞こえる恵梨香の声は、小さく不安げだった。「お金とか口座のこと、あなたが知らなかったなんて思わなくて。本当に、全部知ってると思ってたの」

もちろん、彼女は私が知っていると思っていたはずだ。恵梨香の世界では、すべてが理に適っているのだから。親は娘たちを平等に愛し、家族は互いに助け合う。誰も、何もかもから完全に除け者にされたりしない。

「私が言いたかったことの意味をただ説明したくて――」

「恵梨香」私は彼女の言葉を遮った。「やめて」

「でも、私、何か悪いこと言ったみたいで、あなたを怒らせるつもりじゃなかったの――」

「お願い」ドアに後頭部を預ける。「今は、本当に一人にさせてほしい」

「お姉ちゃん、本当にごめんなさい。そんな風に聞こえるなんて思わなかったの。そういうつもりじゃ――」

「あなたのせいじゃない」そして、本当にそうだった。恵梨香は、お気に入りに選ばれたわけじゃない。未熟児で生まれ、両親が彼女の一挙手一投足に執着するほどの健康問題を抱えてほしいと頼んだわけでもない。彼女の存在が、どういうわけか私の存在を完全に無意味なものにしてしまうなんて、彼女が決めたことじゃない。「今はただ、少し距離を置かせてほしい。いい?」

彼女がためらう気配がして、やがてその足音が廊下を遠ざかっていった。

ドアに鍵をかけ、明かりを消した。

部屋は暗かった。私はベッドの上であぐらをかき、スマホをスクロールして写真を見ていた。職場の写真、制服姿の自撮り、見知らぬ人の家に届けた料理の写真。何ヶ月も、何ヶ月も遡っても、家族写真は一枚もなかった。母や父、恵梨香と一緒に写った写真は一枚も。

最後にみんなで写真を撮ったのはいつだっただろう? 本気で思い出せない。もしかしたら何年も前、教会のイベントか何かで、カメラ映りのために完璧な家族を演じる必要があった時かもしれない。

スマホを置き、ナイトスタンドから聖書を取り出した。ページの端は擦り切れ、これまで受けてきた日曜学校の授業のせいで、十数種類の色でハイライトが引かれている。愛と家族と、すべての人に対する神の完璧な計画について書かれた聖句の数々。

神様の計画、本当に最悪ね、と心の中で思い、すぐにそう思ったことに罪悪感を覚えた。

後ろの方にある白紙のページを見つけ、丁寧な文字でこう書き記した。『私は恵梨香のために祈ります。彼女が常に主の愛を感じられますように。そして、姉の愛が彼女のもとを去っていないことを知ってくれますように』

私の筆跡は震えて、不揃いだった。いつからこんなに手が震えるようになったのかわからないけれど、今も止まってくれない。

痛みが不意にぶり返した。鋭く、ねじれるような痛みが胃の奥深くを突き刺す。私は横向きに体を丸め、腹部に枕を強く押し当てた。声を出さないよう、枕の端を強く噛みしめた。

もしかしたら、違う結果を期待すべきではなかったのかもしれない。その考えは、絶望的ながら、どこか安らかに感じられた。 たぶん、これが元々こうなる運命だったのだ。私はいつだって、重要じゃない人間であり続ける運命だったのかもしれない。

痛みが全身に広がるのを感じながら、目を閉じた。でも正直、もう肉体的な痛みは最悪の部分ですらなかった。最悪なのは、二十一年もの間、決して自分に向けられることのなかった愛を必死に得ようとしてきたという事実を知ってしまったこと。そして今、私に残されたのはおそらく六ヶ月。その真実とどう向き合うべきか、考えるために。

少なくとも、恵梨香は何も悪いことをしていない。私の妹は、こんなこと望んでいなかった。教会の笑顔と完璧な見せかけの下に隠された、私たちの家族の壊れて歪んだ実態の板挟みになるなんて、彼女には相応しくない。

私は聖書を胸に抱きしめた。

三ヶ月から、六ヶ月。

保険の受取人が誰かなんて、もうどうでもいいことなのだろう。どうせ私は、そのどれも見届けることなく、この世からいなくなるのだから。

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