第5章

栞奈視点

膝を胸にきつく引き寄せた。薄っぺらなパジャマは、寒さに対してほとんど役に立たない。

隅の方で何かが動いた。

ここに着いたばかりの時、彼の存在には気づいていた。この橋の下で暮らすもう一人の人間。髪はもつれ、服は汚れた年配の男。さっきまで反対側の隅に座っていたのに、私が気づかないうちに、もっと近くに移動してきていた。

彼は私をじっと見つめていた。

心臓が速く脈打ち始める。大丈夫。ただのホームレスの人よ。私に何かするはずがない。

でも、彼の視線が気に入らなかった。私は少し身じろぎして、自分のいる隅の奥へともっと体を寄せようとした。けれど、もう逃げ場はない。

...

ログインして続きを読む