第6章
雅人の手は、ステアリングホイールをきつく握りしめていた。彼は前方の道路をまっすぐに見つめ、歯を食いしばっている。
助手席では佳代が祈りを捧げていた。その声は何度も途切れ途切れになる。「神様、どうかこれが悪い夢だと言ってください。お願いします。何でもいたします。ただ、これが現実でありませんように」
後部座席では、恵梨香が息もできないほど激しく泣いていた。昨夜の光景が頭から離れない。パジャマ姿で、靴も履かずに玄関に立つ栞奈の姿。父に家を出ていけと言われたときの、あの完全な敗北を浮かべた表情。
「私のせいだ」嗚咽の合間に言葉が漏れる。「止めるべきだった。私が――」
「やめなさい」...
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