第163章 この作品、もらってもいいですか?

教室へ戻ると、橘晴美は周囲に誰もいないのを確かめ、制服の内側に隠していた巻物をそっと鞄へ滑り込ませた。代わりに鞄の奥からもう一枚の巻物を取り出す。ここしばらく新しい書体の練習に使っていた、失敗作の束だ。

橘結衣の名が書かれたラベルを剥がし、その失敗作のほうへ貼り替える。橘晴美はそれを制服の内側へ戻し、松浦輝仁のオフィスへ引き返した。

さっき電話口で松浦輝仁が「駐車場へ行く」と言っていた。外回りだろう。案の定、まだ戻っていない。

橘晴美はそれを引き出しに放り込み、すっと閉める。取っ手の角度まで元通り。何事もなかった顔で、その場を離れた。

——

書道協会。

男子トイレと女子トイレの間...

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