第17章

「……ありがとう。これで、貸し借りなしね」

彼が助けてくれなければ、私は狩場で死んでいたかもしれない。

けれど同時に、そもそも彼が私を傷つけなければ、ここまでの大事にはならなかったはずだ。

神崎司の口元に、嘲るような笑みが一瞬だけ浮かぶ。

「貸し借りなし……だと?」

桐生初夏は出血が多すぎて、頭がぼうっとしていた。彼の言葉の含みを掴めないまま、トイレに行こうと身を起こす。

だが小腿の傷が邪魔をした。足先が床に触れた瞬間、ぞくりと背筋が跳ねるほどの激痛が走る。

しかも、隣にいるこの男に気軽に頼む勇気はない。

彼がそこに立っているだけで、部屋の温度が数度下がったみたいに空気が冷え...

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