第1章

千夏視点

今日は、私の誕生日だった。

クリスタルのシャンデリアが暖かい光を放つ豪奢なリビングルームを、私は階段を降りていく。部屋の隅々にはピンクの薔薇が飾られ、シャンパングラスの触れ合う音と笑い声が、S市にある私たちの屋敷に響き渡っていた。

一瞬だけ、胸がときめいた。

もしかしたら、みんな覚えていてくれたのかも。

けれど、ごく普通のジーンズとTシャツ姿の私が最後の一段に足を下ろしたとき、現実は平手打ちのように私を襲った。視線は皆、デザイナーズドレスに身を包み、F市大学の合格通知書を握りしめる由美に注がれていた。

「我々の天才的な娘に!」父がシャンパングラスを高く掲げ、その声は誇りに満ちていた。「F市大学のコンピューターサイエンス学科だ!我が家の誇りだよ!」

部屋は拍手喝采に包まれた。母は満面の笑みを浮かべ、兄の天野拓也は馬鹿みたいににやにやしている。S市の上流階級の友人たちは、由美に次々とお祝いの言葉をかけていた。私はそこにいないかのように立ち尽くし、本来なら私も含まれているはずのお祝いの光景をただ見つめていた。

今日で、十八歳なのに。

この言葉が頭の中で絶叫する。

「お父さん……」騒音にかき消されそうなほど小さな声で、私は囁いた。「今日、私の誕生日……」

天野拓也が、いつもの苛立ったような表情でこちらを向いた。

「千夏、由美の大事な日に水を差すんじゃねえよ。誕生日?お前に祝うことなんてあんだろ」

その言葉は、どんな暴力よりも深く私を傷つけた。心の中で何かが砕ける音がした。心を繋ぎとめていた最後の糸が、ぷつりと切れたような。

母は私を一瞥だにしなかった。由美の髪を整え、記念撮影やお祝いのディナーについて囁くのに忙しい。

私は階段を上って自室に戻った。一歩一歩が、鉛のように重かった。

午後十一時。ベッドに腰掛けると、自分の部屋がこれまでになく狭く感じられた。目の前には、完成させたK市大学の願書が広げられていた。完璧な成績、素晴らしいテストの点数、彼らが望むと言っていたすべてがそこにあった。

でも、これが送られることはないと分かっていた。

三年間。必死の三年間。十分に良くあろうと、賢くあろうと、価値ある人間であろうと努力してきた。けれど、学業での成果はすべて無視され、努力は目に見えず、誕生日は毎年忘れ去られた。

私は一枚の紙を取り出し、書き始めた。

【あなたたちが望む娘になろうと努力しましたが、私は十分ではありませんでした。たぶん、私がいない方が、この家族は完璧になるのでしょう。誰も責めません――これは私の選択です。――天野千夏、この名前を使うのはこれが最後】

手紙を折りながら、手が震えた。

これで終わりだ。私は思った。もう、苦しまなくていい。決して手に入らない愛を、望まなくていいんだ。

屋上は冷たい風が吹いていた。遥か下には、かつて家族でのバーベキューや、決して開かれることのなかった誕生日パーティーを夢見た庭が見える。

私は縁に上り、コンクリートの端を裸足で掴んだ。風が髪を顔に叩きつける。眼下に広がる完璧に手入れされた景色を見下ろした。

「お母さん、お父さん……愛してる」

決して愛し返してはくれなかったけれど、夜の空気にそう囁いた。

もし来世があるなら、もう二度と誰も愛さない。

目を閉じ、一歩前に踏み出した。

落下は、永遠のようでもあり、一瞬のようでもあった。風が耳元を通り過ぎていく。何年かぶりに、安らぎのようなものを感じた。

目を開けると、暗闇に包まれているはずが、まだ自分の意識があることに気づいた。なんだって?天国にでも来たっていうの?

見下ろすと、私は宙に浮いていた。その下には、無残に砕け散った自分の体があった。

一晩が経ち、血はすでに乾いていたが、私の死は凄惨なものだった――首と体はありえない方向にねじ曲がっている。裂けた肉の間から、小さな虫が傷口を這っているのが見えた。

マジか――私、本当に幽霊になっちゃったんだ!

衝撃が薄れると、私はただ宙に浮かんだまま待っていた。

涙を、後悔を、私の死が意味を持つという何らかのしるしを、待ち続けた。

最初に庭に出てきたのは父だった。警察官と話しながら、首を振っている。

「あの子は昔から芝居がかったところがありましてね。正直、驚きはありませんよ」

芝居がかってる?。私は声にならない叫びを上げた。こっちは死んだのよ、それを芝居がかってるですって?。

次に現れたのは母だった。泣きじゃくる由美を庇うように抱きしめている。まるで私の死体が、大事な娘に心の傷を負わせるかもしれないとでも言うように。

「見ちゃだめよ、由美。あなたのせいじゃないわ。世の中にはね、人生に耐えられない人間もいるのよ」

天野拓也はすでに葬儀社に電話をかけていた。

「ええ、迅速かつ内密に処理をお願いします。天野家のスキャンダルがニュースになるわけにはいきませんから」

涙はなかった。

「どうして気づいてやれなかったんだろう」という言葉も、「もっと愛してあげるべきだった」という後悔もなかった。

あったのは、ただの後始末だけ。

父が再び警官の方を向いた。

「正直なところ、あの子は我々の生活に馴染めなかった。結局のところ、遺伝子がすべてを決めるということでしょうな」

母は由美を庇ったまま頷いた。

「あの子を家に引き取ったときから、こうなるのではと心配はしていましたの。自分で招いた結果ですわ――私たちの懸念が正しかったと証明されたようなものです」

彼らが私の火葬について、まるでビジネスの取引のように話し合うのを見ていた。私の死は、不都合な広報問題に成り下がっていた。

その瞬間、すべてが真っ白になった。

はっと息を呑み、ベッドから飛び起きた。心臓が激しく脈打っている。見慣れないカーテンの隙間から、太陽の光が差し込んでいた。自分の顔に手をやると――若くて、傷ひとつなく、生きている。

一体、どうなってるの?。

鏡までよろめきながら進み、そこに映る自分を見つめた。十五歳。傷跡も、疲労も、死んだような目もしていない。ここは、DNA鑑定で私が実の娘だと判明した後、初めて連れてこられた客間だ。

三年前。

階下から声が聞こえてくる――あの日、「家族のルール」と彼らの期待について説明されたときと、同じ会話だ。

「千夏!」父の声が響いた。「降りてきなさい!話さなければならないことがたくさんある!」

鏡の中の若い自分の顔を見つめる。けれど、その瞳には、あるはずのない知識が宿っていた。完璧な仮面の下に隠された、この人たちの本当の姿を知っている。

今度は違う。何年かぶりに、鏡の中の私が微笑んだ。今度は、彼らの愛を勝ち取るために来たんじゃない。私にはそんなもの必要ないって、証明するために来たんだ。

私はドアに向かって歩き出した。かつて、家族がすべてだと信じていた必死な十五歳の少女はもういない。最も過酷な教訓を学んだ人間が、そこにいた。最も愛してくれるはずの人々が、許せば自分を破壊し尽くすということを。

「今、行きますわ、天野さん」

私は落ち着いた冷たい声で、そう返事をした。

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