第5章

 遠のく意識の中、誰かが医者を呼ぶ声が聞こえた気がした。

 私は死んだ。だが、消滅はしなかった。

 宙を漂う魂となった私は、医師が自らの遺体に白い布を被せるのを、そしてサマンサがベッドの傍らで身を裂くように泣き叫ぶのを見下ろしていた。

 かつてないほどの軽やかさを感じていた。肉体を苛む苦痛も、心を縛り付けるしがらみも、もう何一つない。

 七日後。サマンサは私の遺骨と遺言書を携え、アレクサンダーの会社に乗り込んだ。

 アレクサンダーは社長室で頭を抱えながら、あちこちに電話をかけてはなりふり構わず借金を頼み込んでいた。

 見違えるほどやつれ果て、無精髭を伸ばしたその両目は真っ赤に血走...

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