第3章

昨夜の誤解が解けて、私は嘘みたいにぐっすり眠れた。今朝、剣が仕事に出かける前に、彼は私の額にキスをして、「何かあったらすぐに連絡しろ」と言ってくれた。

午後二時、カフェで働きながら、私はまだその安心感に浸っていた。昨夜の一件を経て、私たちの信頼は以前よりもっと深まっていた。

だが、顔を上げた瞬間、全身の血が凍りついた。

竜吾。

彼は隅のボックス席に座り、見覚えのある茶色い瞳が冷たい悪意をたたえて私を見つめていた。その唇には、肌が粟立つほど冷たい笑みが浮かんでいる。手の中のグラスが、滑り落ちそうになる。

『嘘……どうしてここがわかったの?』

竜吾はゆっくりと立ち上がり、私に向かって歩いてくる。記憶にあるのと同じ、背が高く痩せた体躯と左腕を覆う大きな刺青が人目を引くが、その瞳は以前よりも危険な光を宿していた。

「会いたかったか、ハニー?」蛇が威嚇するような、低く掠れた声だった。

私は反射的に後ずさった。「竜吾……あなた……出所したの?」

「三日前にな」彼は冷たくせせら笑った。「真っ先にやったのがお前を探すことだ。ずいぶんいい暮らしをしてるじゃねえか。新しい『守ってくれるヤツ』でも見つけたか?」

カフェの他の客たちはただならぬ雰囲気を察したのか、気まずそうに席を立ち始めた。やがて、店内には私たち二人だけになった。

「帰って、竜吾。私たちはもう終わったの」私は声を毅然とさせようとしたが、その震えが恐怖を裏切っていた。

彼はカウンターに近づき、大理石の天板に両手をついて身を乗り出した。「終わった?」彼の笑い声に、背筋が凍った。「サツの男を見つけりゃ、俺から逃げられるとでも思ったか?」

「剣はただの警察官じゃない……」

「剣? 『死神』の黒崎剣のことか?」

どうして彼が剣の名前を知っているの? 心臓が嫌な音を立てて沈んだ。

「そいつがかなりのやり手だってのは聞いてる。だがな、星子……」竜吾が私の顔に触れようと手を伸ばす。私は激しく身を引いた。「お前のことを本当にわかってるのは俺だ。俺と来い。今じゃ新しい後ろ盾もいる。本物の『守り』をくれてやる」

「後ろ盾って?」思わず言葉が口をついて出た。

竜吾の笑みが、さらに邪悪なものに変わる。「お前は知りすぎる必要はねえ。ただ、俺が以前よりずっと力をつけたってことだけ知っとけ。あのヤクの商売……ありゃほんの始まりに過ぎなかったんだ」

再び血の気が引いた。彼は何を言っているの? 麻薬のことか?

「離れなさい、竜吾。あなたと一緒に行く気はないわ」

「そうか?」彼の声が、突然氷のように冷たくなった。「お前に選ぶ権利があるとでも?」

彼の注意が逸れた隙に、私はそっと制服のポケットに入っている緊急ボタンに手を伸ばした。剣が「これを押せば、五分で駆けつける」と言って渡してくれたものだ。

だが、次の瞬間、竜吾は私の動きに気づいた。

「何に手を伸ばしてやがる」彼は私の手首を掴んだが、私はすでにその小さな赤いボタンを押していた。

私の表情を見て、竜吾の顔つきが凶悪に変わる。「助けを呼んだな? このアマ! サツの彼氏が助けてくれるとでも思ってんのか?」

「離して!」私は必死にもがいたが、彼は力が強すぎた。

「ふざけんな!」竜吾は私の手首を暴力的に握りしめ、私は危うく悲鳴を上げそうになった。「俺はお前に人生で最高の数年をくれてやったんだぞ、これが裏切り方か? 今じゃあのサツと一緒になって、お高くとまった女にでもなったつもりか?」

彼は私を裏口の方へ引きずり始めた。「今日は俺と来てもらう。本物の男ってやつを教えてやる!」

「いや!」私は必死に抵抗したが、彼の手は鉄の万力みたいだった。「竜吾、お願い……」

「お願い?」彼は冷たく笑った。「もう遅い。もっと早く現実を見るべきだったな」

四分も経たないうちに、カフェの正面ドアが轟音と共に乱暴に押し開けられた。

剣が戸口に立っていた。そのシルエットは嵐のように威圧的だ。彼の瞳は、私が今まで見た中で最も冷たいグレーブルーの色をしており、その全身から殺気が放たれていた。

「彼女を離せ」

剣の声は、まるで地獄の底から響いてくるかのように低かった。竜吾の握る力が、目に見えて緩んだ。

「剣……」彼の元へ駆け寄りたかったが、竜吾は再び私を掴む力を強めた。

「お前がそいつか?」竜吾は平静を装おうとしたが、彼の体の緊張が私にも伝わってきた。「有名な『死神』さんとはね。大したことなさそうじゃねえか……」

剣は何も言わず、ただ私たちの方へ歩み続けた。その一歩一歩が、竜吾の心臓を直接踏みつけているかのようだった。

「警告しておくぜ、サツ!」竜吾の声が震え始めた。「俺にはバックがついてるんだ。手を出してみろ!」

剣はついに、私たちからわずか三歩の距離で立ち止まった。彼の視線が、赤く腫れた私の手首を捉え、その表情はさらに恐ろしいものへと変わった。

「バックが?」剣の唇が、氷よりも冷たい笑みの形にわずかに歪んだ。「好都合だ。ちょうどお前の仕入れ先を探していたところだった」

次の瞬間、剣は電光石火の速さで動き、外の壁に竜吾を叩きつけた。あまりの速さに、何が起こったのかほとんど見えなかった。

「いいか?」剣は竜吾の耳元で囁いた。二人だけにしか聞こえないほどの低い声だったが、竜吾の顔が瞬時に青ざめるのが見えた。「お前が一度でも彼女に手を出したら、俺はお前のヤクの証拠を使って、刑務所でお前が爺になるまで『特別待遇』で面倒を見てもらうようにしてやる。わかったか?」

「お前……どうしてそれを……」竜吾の声が完全に裏返った。

「お前が想像する以上に知っている」剣の笑みは、さらに危険な色を帯びた。「西地区の新興組織との関係もな。あいつらが、警察を敵に回してまで、お前みたいな末端の運び屋を守るとでも思うか?」

竜吾は激しく震え始めた。「おれは……おれは何も……」

「何も?」剣はポケットから証拠品の袋を取り出した。中には何か入っている。「これは三ヶ月前、お前の部屋から見つかったものだ。十年はぶち込むのに十分な量だ。だがな……」

剣が言葉を切ると、竜吾はすでに汗だくだった。

「今、お前には二つの選択肢がある。一つ目、星子の人生から永遠に消え、この街から出ていくこと。二つ目、俺が『合法的だが、徹底的な』法的手続きを、その身で味わわせてやることだ」

「お、俺は一番目を! 一番目を選びます!」竜吾はほとんど泣きながらそう言った。

剣が彼を解放すると、竜吾は振り返る勇気もなく、その場からよろめきながら逃げ去った。

角を曲がって消えていく竜吾の逃げ姿を見送りながら、私は自分がずっと震えていたことに気づいた。剣が振り返り、すぐに私の方へ歩み寄ってくる。

「星子……」彼の声は瞬時に優しくなった。さっきまでの恐ろしい『死神』の面影はどこにもない。

「剣!」私はもう我慢できず、彼の腕の中に飛び込んだ。彼は私をきつく抱きしめ、片手で優しく髪を撫でてくれる。

「もう誰も君を傷つけさせない。約束する」彼の囁きが耳元で響く。

「私……彼に……されるかと……」私は彼の腕の中で震えた。恐怖はまだ完全には消えていない。

「あいつにそんな度胸はない。二度とだ」剣の声は誓いのように固かった。「俺がいる限り、誰も君の髪一本にだって触れさせない」

彼を見上げると、氷のように冷たかった瞳が、今は春の泉のように優しい。「どうしてこんなに早く来れたの?」

「署で緊急信号を受け取って、緊急走行で駆けつけた」彼は親指で私の頬の涙の跡を優しく拭う。「これからは、どんな危険に遭っても、すぐに俺に連絡しろ。怖がるな、ためらうな」

「でも、仕事中だったんじゃ……」

「君より大事なものはない」彼は私の言葉を遮った。「仕事は代わりが見つかる。相棒だってそうだ。でも、美良地星子は一人しかいない」

その言葉に、心臓が止まりそうになった。私はつま先立ちで、彼の顎にキスをした。「ありがとう、剣」

「馬鹿だな」彼は柔らかく笑ったが、その瞳には今まで見たことのない憂いが宿っていた。「竜吾が言っていた『新しい後ろ盾』……調べる必要がある。ここ数日は特に気をつけてくれ」

「彼はまた来ると思う?」

剣の表情が真剣なものになった。「竜吾みたいな人間は、恥をかかされたからといって簡単には諦めない。だが……」彼は私を強く抱きしめた。「準備はしておく。もしあいつがまた姿を現したら、次は脅しだけじゃ済まない」

日が沈み、カフェには私たち二人だけが残された。剣は私の手首を調べ、怪我がないことを確かめてから、ようやく本当に安堵したようだった。

「家に帰ろう」彼は私の手を取った。「今夜は、俺も一緒にいる」

カフェを出る時、私は竜吾が座っていた隅の席に目をやった。過去の悪夢は一時的に退いたけれど、本当の試練はこれから始まるのかもしれないとわかっていた。

でも、そんなことはどうでもよかった。私には剣がいるから。私の守護者、私の『死神』さん。

彼の前では、どんな悪魔も恐怖に震え上がるだろう。

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