第5章

竜吾の一件から三日が経ったが、手首の痣はまだ完全には消えていなかった。

ベージュの革製ソファに座り、私は無意識にその青紫色の痕を指でなぞっていた。脳裏に蘇るのは、あの日の光景――私を平手打ちした時の、竜吾の歪んだ笑みだ。

規定によれば、事件の目撃者は全員、心理鑑定を受けることになっていた。

剣は最初、一緒に行くと言ってきかなかった。「君を一人でこんな目に遭わせるのは、気が進まない」

だが、三十分ほど前に緊急の呼び出しがあったのだ。

「事件に進展があった。行かなきゃならない」彼は申し訳なさそうに私の額にキスを落とした。「できるだけ早く終わらせて、迎えに来るから」

今こ...

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