第106章 こう呼んでもいいですか?

「早くちゃんと立って! 船、ひっくり返る!」

ぐらんぐらん揺れる小舟を見て、私はきゃあきゃあ悲鳴を上げた。

神崎倫司は私の手をぱっと離すと、どこか気だるげな顔のまま、ゆっくりとオールを畳む。

「何ビビってんだよ。俺がいるだろ。ほら、ちゃんと乗せてやる」

倫司がオールを水の中でくるり、くるりと回すたび、小舟はゆさゆさと揺れ続ける。怖くてたまらず、私は船の真ん中にぺたんと座り込み、両側の縁をぎゅっと掴んだ。

「神崎倫司、やっぱ岸に戻ろ? あんた、あんまり慣れてないでしょ」

腕を疑った私に、倫司はむしろ張り切った。

「はぁ? じゃあ見せてやるよ。本物の実力ってやつを!」

言いながら...

ログインして続きを読む