第六十章 親認め

「香織、ふざけるな!」

 瀬川庭山の表情が一瞬で冷えた。瀬川香織を見据え、低い声で言う。

「どけ」

「どきません。あなたがその女をこの家に置くっていうなら、まず私を踏み越えてからにして!」

 香織の言葉に、庭山の堪忍袋の緒が切れた。

「おい、見てないで動け。香織を引き離せ!」

 野次馬みたいに立っていた使用人たちが、はっとして一斉に動く。誰かが香織の腕に手を伸ばした瞬間――石川雲が悲鳴を上げて飛び込んだ。

「やめて! 私の娘に触らないで!」

 庭山は眉間に皺を寄せる。

「奥様と香織、どちらも先に部屋へ」

「なにするの、なにするのよ! 瀬川庭山、この薄情者! 殺してやる、殺...

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