第62章 なるほど

「お父さん!」

 瀬川香織が床を踏み鳴らし、今にも言い返そうとした、その瞬間。

「香織……送って」

 石川雲の低い声が落ちた。

「ママ……」

 香織が振り向くと、石川雲の顔は氷みたいに冷えていた。

「言うことを聞きなさい」

 瀬川香織は納得いかないというふうに、瀬川雫をきつく睨みつける。けれど結局、石川雲の前に体を滑り込ませて庇うようにしながら、踵を返して階段を上っていった。

 瀬川庭山は雫へ視線を移す。頬には赤い手形がくっきり残っていて、その痛々しさに眉を寄せた。

「いい子だ。香織は……母親に甘やかされて育ったからな。気にするな。帰ったら父さんがきっちり叱っておく」

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