第72章 知り合い

背中はもう壁。恐怖に身がすくみ、私は反射的に壁へぴたりと張りついた。眉をひそめて男を睨む。

「……何するの。あんたと酒なんて飲む気ないんだけど」

「俺と飲む気がないってことはさ。男の子呼んで一緒に飲む気はあるってことだろ?」

その言い草が生理的に無理で、胸の奥がぞわりと粟立つ。

「どかないなら……人を呼ぶから」

「人を呼ぶ?」

男は口元だけで笑い、流れるように手のひらを伸ばしてきて、私の頬を撫でた。

「ウサギちゃん、外の連中にバラしたいの? 瀬川家のお嬢様が、こんな場所に来てるって」

その一言で、血の気が引いた。

私は弾かれたように顔を上げ、男の目元を凝視する。

「……あ...

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