第86章 原田家

神崎倫司視点

あと1日で、瀬川凪紗の結婚式だ。朝からずっと、胸の内がざわついて仕方がなかった。瀬川凪紗が何を考えているのか、俺にはどうにも読み切れない。本当に嫁ぐつもりなのか、それとも――違うのか。

落ち着かないまま、気づけば俺は衝動的に瀬川凪紗の家の別荘近くまで車を走らせていた。

車を停めると、そのまま運転席で煙草に火をつける。何のために来たのか、自分でもわからない。たとえ瀬川凪紗に会えたとして、俺に何が変えられるのかも。

それでも今は、少しでも彼女の近くにいたかった。少しでも、もっと近くに。そうでもしなければ、このどうしようもない気持ちは治まりそうになかった。

やがて、妙なこと...

ログインして続きを読む