第9章 名馬オークション

数分遅れていたら、瀬川凪紗が何をされていたのか――想像するだけで背筋が凍る。

俺は彼女を抱きかかえて部屋へ運び込んだ。医者の診察では幸い、大きな外傷もなく命に別状はないという。

目の前の薄汚い男を見下ろすと、腸が煮えくり返った。今すぐ骨の一本残らず引き裂いてやりたい。

瀬川凪紗が「その男に会いたい」と言い出したとき、俺は少し迷った。正直に言えば、彼女に――俺の残酷な一面を見せたくなかったのだ。

だが、すぐに思い至る。もし将来、彼女が神崎家に嫁いでくるなら。神崎家の連中は、この男なんかよりよほど恐ろしい。

早いうちに慣れておいたほうがいい。

そう腹を括り、男を連れてこさせた。

瀬...

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