第92章 誰にも見させない

 神崎倫司視点

 遠くの挙式会場を眺めながら、俺は煙草を一本、また一本と吸い潰していた。

 「倫司様、もうやめませんか。あっちはもう結婚するんですよ。ここにいても仕方ないですし、いっそ帰りましょうよ」

 俺は手の中の煙草をぐしゃりと揉み消した。胸の底から、言葉にできない感情がどっと込み上げてくる。

 このまま引き下がるわけにはいかない。

 ここで引いたら、一生消えない傷になる。

 俺は大股で階段へ向かった。背後から井上大輔が慌てて追ってくる。

 「倫司様、どこ行くんですか?」

 足を止め、振り返る。

 「ここで宮本良介を見張ってろ。俺は瀬川凪紗のところへ行く。何かあったらす...

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